サイボウズは2026年4月22日、kintoneに標準搭載するAI機能群「kintone AI」を、2026年6月14日の定期アップデートで正式提供すると発表しました。これまで「kintone AIラボ」としてβ提供されてきた検索AIやアプリ作成AIなどが、いよいよ正式機能として組み込まれます。
kintone AIとは何か
kintone AIは、kintone本体に組み込まれるAI機能群の総称です。2025年4月に「kintone AIラボ」としてβ版の提供が始まり、検索AIとアプリ作成AIを中心に機能が追加されてきました。約1年のβ期間を経て、2026年6月14日の定期アップデートで正式版に移行します。
正式版で押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 対象は、スタンダードコースまたはワイドコースの契約ユーザー
- 個別申し込みは不要で、管理者が「kintone AI管理」画面から機能を有効化する
- 追加料金は発生しないが、月ごとに付与される「AIクレジット」の範囲内で利用する
ライトコースや一部の開発者向けライセンスは対象外となるため、自社の契約プランを事前に確認しておく必要があります。
β版から正式版へ ― 何が変わるのか
β版「kintone AIラボ」は、機能を試しに使える形で無償提供されてきました。正式版への移行で起きる変化は、機能ラインナップの拡充だけではありません。利用量を管理する仕組みとして、AIクレジット制が導入される点が、運用面での最大の変化です。
これまでは「使えるかどうか」が論点でしたが、正式版以降は「どの機能に、どの程度のクレジットを割り当てるか」を運用設計の中で考える段階に入ります。後述するように、AIクレジット上限に達するとその月はAI機能が使えなくなり、未使用分の翌月繰り越しもできません。
提供される6つの主要機能とAIアプリ検索
公式リリースでは、提供機能が「データ活用支援」と「市民開発支援」の2分類・6機能として紹介されています。さらに、kintoneヘルプ上ではAIアプリ検索もAI機能の一覧およびクレジット消費対象として記載されており、実際の管理画面では7項目として扱われる可能性が高いと見ておくのが安全です。
データ活用支援系の機能
検索AI は、kintoneアプリのデータをもとに、ユーザーの質問や指示に対してAIが回答するチャットボットを作成できる機能です。複数のアプリを検索対象に指定でき、回答はアクセス権に基づいて生成されます。社内FAQ、各種規程、過去の問い合わせ履歴、ナレッジ集約アプリといった、社内情報検索の用途と相性が良い機能です。

レコード一覧分析AI は、レコード一覧の内容をAIチャットで分析・要約できる機能です。公式ヘルプでは、レポート作成、傾向分析、次のアクションの示唆までを支援すると説明されています。商談履歴、問い合わせ傾向、日報の振り返りといった、定型レポート作成の前段階を効率化する用途が見えてきます。

スレッド要約AI は、スペース内のスレッドに投稿されたコメント群を要約する機能です。長期間にわたる議論や、参加していない期間が長いスレッドのキャッチアップに役立ちます。なお、ゲストスペースでは利用できないと明記されている点には注意が必要です。

市民開発支援系の機能
アプリ作成AI は、AIチャットで「こんなアプリを作りたい」と伝えると、フォーム設定やアプリ名を提案し、ワンクリックでフォームに反映できる機能です。kintoneを触り始めたばかりの担当者にとって、最初のアプリを形にするまでのハードルを大きく下げる役割を担います。

プロセス管理設定AI は、申請・承認フローなどのプロセス管理設定をAIチャットで支援する機能です。ステータス、作業者、アクションといった構成要素を提案し、ワンクリックで設定に反映できます。プロセス管理は、kintoneの中でも設計に経験を要する領域だけに、市民開発の裾野を広げるうえで意味の大きい機能です。

アプリ設定レビューAI は、kintoneシステム管理者があらかじめ登録した「アプリ設定ガイドライン」を踏まえ、AIがアプリ設定をレビューする機能です。社内で野良アプリ化を防ぎたい、命名規則やフィールド設計の標準を守らせたい、といったガバナンス要件に対する直接的な打ち手になります。

ヘルプに記載されているAIアプリ検索
公式PDFの主要6機能とは別に、kintoneヘルプの「有効化と利用する機能の選択」ページにはAIアプリ検索も機能一覧に含まれており、AIクレジットの消費対象(10クレジット)としても記載されています。記事や社内資料で「6機能」と紹介する場合でも、実際の管理画面ではAIアプリ検索も加えた構成で表示される可能性がある点は補足しておくべきポイントです。

AIクレジット制 ― 「追加料金なし」と「無制限」は別物
kintone AIでもっとも実務に響くのは、このAIクレジット制です。サイボウズの公式ヘルプによれば、2026年6月の定期アップデートからAIクレジット制が導入され、AI機能を使うと自動的に必要クレジットが消費されます。月内に上限へ達するとその月のAI機能は利用できず、月初にリセットされ、未使用分の翌月繰り越しはできません。
月間AIクレジットの上限は、契約形態によって次のように決まっています。
契約 | 月間AIクレジット |
|---|---|
ワイドコース | 契約ユーザー数 × 1,000 |
スタンダードコース | 契約ユーザー数 × 500 |
チーム応援ライセンス | 500 |
試用期間中 | 500 |
機能ごとの消費クレジットも公開されています。検索AI、レコード一覧分析AI、スレッド要約AI、AIアプリ検索は1回あたり10クレジット、アプリ作成AI、プロセス管理設定AI、アプリ設定レビューAIは1回あたり1クレジットです。
たとえばスタンダードコースで20ユーザー契約のケースを想定すると、月間で10,000クレジットが付与されます。これを単純に検索AIだけで使うと、月1,000回の利用が上限になる計算です。組織全体で全員が毎日使うような運用を想定すると、思っているより早く上限に届く可能性があります。
「追加料金なしで使える」のは事実ですが、「無制限で使い放題」ではない、という点が運用設計上のポイントになります。
セキュリティと管理者設定 ― 押さえるべき要点
業務データを扱う以上、AIに入力した情報がどう扱われるのかは、導入判断の中心的な論点になります。kintoneヘルプの記述を整理すると、次のとおりです。
まず、入力データはAIモデルの学習目的で保存・利用されないと明記されています。一方で、AI機能の提供に必要な範囲で、AI基盤として利用している第三者サービスに対しては入力データが送信されます。ヘルプには、現在利用しているAI基盤としてAmazon Bedrockのデータ保護ドキュメントへの参照が記載されています。
つまり、「データは社外に一切出ない」というわけではなく、「学習には使われない」「他の利用者や他ドメインの処理には使われない」「AI基盤への送信は機能提供のために発生する」という3点を切り分けて理解する必要があります。
管理面では、kintoneAI管理画面から、機能ごとの有効・無効の切り替えや、利用ユーザーの範囲指定が可能になります。機密情報を扱うアプリを検索AIの対象から外す、特定の部署だけにアプリ作成AIを開放する、といった粒度のコントロールができることになります。
kintone AIで業務はこう変わる
ここまでの一次情報を踏まえると、kintone AIが業務にもたらす変化は、おおよそ次のように整理できます。
社内に散在していたナレッジは、検索AIによって、自然言語の質問から横断的に引き出せる対象に変わります。情報の置き場所を覚えるよりも、「kintoneに聞けば返ってくる」状態が前提になっていく流れです。
日報、商談履歴、問い合わせ記録といった蓄積データは、レコード一覧分析AIによって、レポート作成の手前で一段階の整理を受けることになります。担当者が事実を集める時間が減り、解釈や打ち手の検討に時間を回しやすくなる方向の変化です。
長文化したスレッドは、スレッド要約AIによって、流れを把握するためのコストが下がります。会議に出ていないメンバーが議論に追いつくまでの時間が短くなる、という意味でのインパクトが大きい機能です。
そして、市民開発の領域では、アプリ作成AI・プロセス管理設定AI・アプリ設定レビューAIの3つが連動します。作る側のハードルを下げるアプリ作成AI・プロセス管理設定AIと、品質を担保するアプリ設定レビューAIが両輪としてそろうことで、現場が自分たちで作る業務改善のスピードと、ガバナンスの両立を狙える構図になります。
導入前に確認すべきこと
最後に、kintone AIを導入する前にチェックしておくべきポイントをまとめます。
第一に、自社の契約コースです。スタンダードまたはワイドコースが対象であり、ライトコースなどでは利用できません。
第二に、AIクレジットの上限と運用ルールです。誰が、どの機能を、どの頻度で使うかを想定し、月内で上限に達するリスクを事前に見積もっておく必要があります。
第三に、機密情報の取り扱い方針です。AI基盤への送信は機能提供のために発生する仕様のため、特に法務・人事・契約関連のアプリについては、検索AIやレコード一覧分析AIの対象に含めるか、運用上のガイドラインをどう定めるかを決めておく必要があります。
第四に、既存アプリのデータ整備状況です。検索AIやレコード一覧分析AIの精度は、対象アプリのデータ品質に大きく依存します。フィールド設計が曖昧だったり、入力ルールが守られていなかったりすると、AIの回答品質も振るわない結果になりやすいでしょう。正式提供までの数か月は、AI導入を見据えたデータ整備の好機と捉えることができます。
まとめ
kintone AIは、2026年6月14日の正式提供をもって、kintoneの標準機能セットの一部に組み込まれます。検索・分析・要約・アプリ作成・プロセス設計・設定レビューといった、kintoneの利用シーンを横断するAI機能が、追加料金なしで使えるようになる意味は小さくありません。
一方で、対象コース、AIクレジットの上限、AI基盤への送信仕様といった「使うための前提条件」も明確に決まっています。「使い放題のAIが付いてくる」という捉え方ではなく、運用ルールとガバナンス設計の中にAI機能を組み込んでいくという前提で導入準備を進めるのが、もっとも現実的な向き合い方です。
正式提供までの期間は、対象アプリの整備、AIクレジットの利用ルール作り、社内の利用ガイドラインの整備に充てる時間として活用できます。KintoNaviでは、正式提供後の機能アップデートや活用事例についても、引き続き追いかけていきます。
参考情報(一次情報)
- サイボウズ公式リリース「kintone AI」正式提供のお知らせ(2026年4月22日)
- kintoneヘルプ「kintone AIについて」
- kintoneヘルプ「kintone AIの有効化と利用する機能の選択」
- kintoneヘルプ「AIクレジットについて」
- kintoneヘルプ「kintone AIのセキュリティ」
※本記事は2026年5月時点で公開されている公式情報をもとに作成しています。正式提供後に仕様が更新される可能性があるため、導入時は最新の公式ドキュメントをご確認ください。