「kintoneを導入したのに、思ったほど使われていない気がする」——導入から半年〜1年が経った企業から、よく聞く言葉です。
そして厄介なのは、この「気がする」を数字で確かめる手段が限られていたことです。全社の利用状況は見られても、「どの部署で使われていて、どの部署で止まっているのか」を標準機能で比較するのは容易ではありませんでした。この部署ごとの温度差を見るための機能が、利用状況ダッシュボードです。
2026年8月9日に適用された2026年8月版アップデートで、そのダッシュボードに組織の軸が加わりました。派手な新機能はありません。しかし「kintoneを導入した企業が、次に何をすべきかを判断するための材料」が増えた点で、見逃せない回です。
本記事では、8月版アップデートの内容を整理したうえで、中小企業の実務にとって何が変わるのかを解説します。
2026年8月版アップデートの全体像
まず、今回の変更点を整理します。
- 利用状況:利用状況ダッシュボードで、組織ごとの利用状況を確認できるようになった(スタンダード・ワイド)
- AI機能:スレッド要約AIがAndroidのモバイルアプリから利用可能に(スタンダード・ワイド)
- ポータル:ポータルに追加できるページ数を3枚から10枚に拡張(ワイド限定)
- 複数ドメイン管理:各ユーザーが利用しているドメインを一覧で確認・変更できる画面を追加(ワイド限定)
- JavaScript API:フィールド値変更イベントがルックアップフィールドでも利用可能に
- 開発基盤:モバイル版「検索画面」「未処理画面」「設定画面」のフロントエンド基盤を刷新
「kintoneを導入したのに、思ったほど使われていない気がする」——導入から半年〜1年が経った企業から、よく聞く言葉です。
そして厄介なのは、この「気がする」を数字で確かめる手段が限られていたことです。全社の利用状況は見られても、「どの部署で使われていて、どの部署で止まっているのか」を標準機能で比較するのは容易ではありませんでした。この部署ごとの温度差を見るための機能が、利用状況ダッシュボードです。
2026年8月9日に適用された2026年8月版アップデートで、そのダッシュボードに組織の軸が加わりました。派手な新機能はありません。しかし「kintoneを導入した企業が、次に何をすべきかを判断するための材料」が増えた点で、見逃せない回です。
本記事では、8月版アップデートの内容を整理したうえで、中小企業の実務にとって何が変わるのかを解説します。
注目点1:利用状況ダッシュボードの組織別表示
今回の目玉は、利用状況ダッシュボードで組織ごとの利用状況を確認できるようになったことです。

利用状況ダッシュボードは、kintoneに標準で用意されている分析画面です。使いはじめる前に、3点だけ確認してください。
- どこから開くか:kintoneシステム管理 →[利用状況ダッシュボード]
- 誰が見られるか:cybozu.com共通管理者、またはkintoneシステム管理者(契約全体の管理担当者と、kintone側の管理担当者)
- 必要な契約:スタンダードコースまたはワイドコース。追加のオプション契約は不要です
つまり、すでにスタンダードコースを使っている企業なら、今日から追加費用なしで見られるということになります。
何が見えるようになったのか。これまでの利用状況ダッシュボードで分かるのは、あくまで環境全体の傾向でした。全体のログインユーザー数、アプリの操作回数、その推移——いずれも「会社としてどれくらい使われているか」を示す数字です。8月版アップデートでは、これに組織(部署)の軸が加わりました。
- 組織ごとの利用ユーザー数の推移
- 組織ごとのアプリ操作回数の推移
一見すると小さな追加ですが、この「軸が1本増えた」ことが効いてきます。
組織別データの実務での使いどころ
組織別の利用状況は、次のような場面で判断材料になります。
1. 研修・説明会の効果測定。「9月に製造部向けの操作研修をやった」のであれば、10月以降の製造部の操作回数が伸びたかを確認できます。伸びていなければ、研修の内容ではなくそもそもの業務設計に問題がある可能性が高い、という切り分けができます。
2. 追加ライセンスの妥当性チェック。ユーザー数を増やす前に、既存ユーザーがどれだけ使えているかを組織単位で確認できます。使われていない部署にアカウントだけ増やしても、月額単価がそのまま無駄になります。
3. 内製化の担い手を見つける。操作回数が突出している組織には、多くの場合「kintoneが好きな人」がいます。全社展開のキーパーソンを探すとき、感覚ではなくデータから当たりをつけられます。
4. 経営層への報告。「kintoneを入れて業務が改善しました」という定性的な報告は、稟議を通した側にとって説得力に欠けます。組織別の利用推移グラフは、そのまま投資対効果の説明資料になります。
kintoneの費用対効果についてはkintoneの料金は結局いくら?3コース徹底比較と中小企業の最適解【2026年版】でも詳しく整理していますが、「支払っている金額」に対して「実際に使われている量」を並べられるようになったという点で、今回のアップデートは料金判断とも直結します。
注目点2:スレッド要約AIがAndroidアプリに対応
2026年6月14日に正式提供が始まったkintone AIの機能のひとつ、スレッド要約AIが、Androidのモバイルアプリから使えるようになりました。

スペースのスレッドは、案件相談や問い合わせ対応で盛り上がるほど長くなり、後から参加した人が「結局どうなったのか」を追うだけで時間を使います。要約AIはこの部分を短縮する機能ですが、これまではPCブラウザが前提でした。
今回のモバイル対応で、現場・外出先・移動中に状況を把握するという使い方が現実的になります。特に、営業・工事・保守など、PCの前にいる時間が短い職種を抱える企業では効きます。現時点ではAndroid版のみで、iOS版は今後の対応予定とされています。iPhoneを主力にしている企業は、もう少し待つ必要があります。
なお、kintone AIはスタンダードコース以上が利用条件で、管理者が「kintone AI管理」画面で有効化する必要があります。「知らないうちに使えるようになっている」機能ではないため、まだONにしていない場合は、この機会に設定を確認しておくことをおすすめします。全体像はkintone AIとは?2026年6月14日正式提供予定の標準AI機能を解説で整理しています。
注目点3:ポータルが10ページまで拡張(ワイドコース限定)
ポータルに追加できるページ数が、従来の3枚から10枚に拡張されました。ただしワイドコース限定です。

ポータルは全社員が毎日最初に見る画面であり、ここに何を置くかは定着率を左右します。ページが増えれば、対象者ごとに情報を出し分けられます。
- 営業部向けポータル
- 管理部向けポータル
- プロジェクト別ポータル
- 拠点別ポータル
1枚のポータルに全部署の情報を詰め込むと、結局誰にとっても見づらい画面になる——という問題への回答です。
中小企業が使うスタンダードコースは、引き続き従来の枚数制限のままです。スタンダードコースでポータルを使い分けたい場合は、限られた枚数の中で「スペース」との役割分担を設計するのが現実的なアプローチになります。全社共通の情報はポータル、部署固有の情報はスペースのポータル、という切り分けです。
注目点4:ルックアップでchangeイベントが使えるようになった
JavaScript APIの改善として、フィールドの値を変更したときのイベント(changeイベント)が、ルックアップフィールドでも利用可能になりました。あわせて、ルックアップ済みかどうか、および参照先レコードIDも取得できるようになっています。
これまで、ルックアップで値を取得した直後に処理を走らせたい場合、changeイベントが素直に使えず、レコード編集画面の表示イベントでの監視や、他フィールドの変更を経由するといった回避策が必要でした。今回の対応で、次のような実装が自然な形で書けるようになります。
- ルックアップ取得後に、単価×数量の計算を実行する
- 取得した取引先情報をもとに入力チェックを行う
- 関連フィールドを自動更新する
- 参照先レコードIDを保持して、後続処理でAPIを呼ぶ
エンドユーザーからは一切見えない変更ですが、カスタマイズを内製している企業や、開発会社に依頼している企業にとっては、実装コストが下がる方向の改善です。既存のカスタマイズに回避策コードが残っている場合は、見直しの好機でもあります。実装例は【実践】kintone × pdfmakeで見積書PDFを出力してみたもあわせてご覧ください。
注目点5:モバイル版のフロントエンド基盤刷新
モバイル版の「検索画面」「未処理画面」「設定画面」で、フロントエンド基盤が刷新されました。
機能追加ではなく、内部の作り替えです。ユーザーが操作して直接得られる変化は限定的ですが、JavaScriptカスタマイズをモバイル画面に適用している場合は注意が必要です。DOM構造に依存した実装をしていると、基盤刷新のタイミングで動作が変わる可能性があります。
サイボウズは一貫して「DOM操作に依存したカスタマイズは非推奨」という立場を取っており、こうした基盤刷新は今後も継続的に行われます。モバイルカスタマイズを入れている企業は、適用後に該当画面の動作確認をしておくと安全です。
■まとめ:「使わせる」から「使われているかを測る」段階へ
2026年8月版アップデートを一言でまとめるなら、「kintone運用の答え合わせがしやすくなった回」です。
大型の新機能はありません。ワイドコース限定の項目も含まれます。それでも、組織別の利用状況が見えるようになったことは、導入から1年以上が経った企業にとって実務的な価値があります。
kintoneの導入プロジェクトは、アプリが完成した時点で終わりではありません。むしろそこからが本番で、「作ったアプリが本当に使われているか」「使われていないなら何が障害なのか」を継続的に確認する作業が、投資を回収できるかどうかを分けます。
これまで、その確認作業は現場ヒアリングに頼るしかありませんでした。8月版アップデートは、そこに数字という共通言語を与えてくれます。まずは利用状況ダッシュボードを開いて、自社の実態を見るところから始めてみてください。
KintoNaviでは、kintoneの導入支援からアプリ設計、プラグイン活用、生成AI連携までを一気通貫でサポートしています。KintoNavi サービスのご案内もあわせてご覧ください。
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参考情報(一次情報)
本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづきます。機能の提供条件や対応コースは変更される場合があります。最新情報はkintone公式サイトおよびkintoneヘルプをご確認ください。